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結論:移住のお金は「出ていく」「変わる」「もらえる」の3つに分けて考える
「地方移住って、結局いくらかかるの?」——お金の不安は、移住をためらう一番の理由かもしれません。
ポイントは、移住のお金をひとかたまりで考えないことです。①最初にドンと出ていく初期費用、②移住後に変わる毎月の生活コスト、③制度でもらえるお金。この3つに分けると、不安の正体がはっきりします。ごちゃ混ぜにするから、必要以上に怖くなるのです。
私はホテルや製造業で20年ほど総務をしたあと、北海道へUターン移住し、地域おこし協力隊も経験しました。実際に払ったお金、想定外だった出費、使える制度を、順番に書いていきます。
① 移住の初期費用のリアル
引っ越し代
移動距離が長いほど高くなります。遠方への移住だと、荷物量によっては数十万円かかることも。単身で近距離なら数万円台ですが、家族で本州から北海道、といった移動になると一気に跳ね上がります。
複数業者の一括見積もりで比較するだけで、数万円単位で変わります。引っ越しは「相見積もり」が基本だと覚えておいてください。移住シーズン(3〜4月)は料金が上がるうえ、そもそも業者が押さえられないこともあります。時期をずらせるなら、ずらしたほうが安いです。
車の購入・準備
地方では車がほぼ必須です。持っていなければ、購入費が初期費用に乗ってきます(中古でも数十万円〜)。しかも夫婦で移住するなら、通勤先が別なので「一人1台」で2台必要になるのが現実です。雪国ならスタッドレスタイヤも別途要ります。
ここは軽視されがちですが、金額としては引っ越し代より大きくなることが多い項目です。くわしくは地方移住と車のリアルに書きました。
住居の初期費用
賃貸の敷金・礼金・仲介手数料などで、家賃の4〜6ヶ月分が目安。ただし地方は家賃そのものが安いので、都会より総額は抑えられます。自治体によっては空き家バンクや家賃補助で、さらに下がることもあります。
家具・家電の買い直し
見落としがちなのがここです。引っ越し代を抑えようとして家具を処分すると、移住先で買い直すことになります。さらに寒冷地では、暖房器具を現地仕様に買い替える必要が出てきます。都会で使っていたエアコン頼みの暖房は、北海道の冬にはまず通用しません。
初期費用の合計イメージ
ざっくりですが、こう見積もっておくと大きく外しません。
- 単身・車あり・近距離:数十万円で収まることもある
- 家族・車を買う・遠距離:100万〜200万円台を覚悟する
幅が広いのは、車を買うかどうかで総額が倍近く変わるからです。まず「車をどうするか」を決めると、見積もりの精度が一気に上がります。
② 生活コストはどう変わる?(経験者の本音)
毎月の生活費は、都会と地方で「上がるもの」と「下がるもの」があります。
- 下がる:家賃、駐車場代、外食費(そもそも店が少ない)
- 上がる:車の維持費(ガソリン・保険・車検・タイヤ)、寒い地域なら冬の暖房費(灯油)、ネット回線などのインフラ
私の実感では、給料の額面は都会より下がっても、家賃が安い分で相殺され、手元に残るお金の感覚はそれほど変わりませんでした。「地方は給料が安いから生活が苦しい」は、必ずしも当てはまりません。(→ 給料のくわしい話はこちら)
ただし冬のある地域は別です。灯油代は月単位でまとまった金額になり、家計への影響が大きい。ここは雪国移住のリアルで具体的に書いています。
③【最大100万円】移住支援金のすべて
知らないと確実に損をするのが、国の「地方創生移住支援事業」——いわゆる移住支援金です。ここは金額が大きいわりに、条件が複雑で誤解も多いところなので、順番に整理します。
いくらもらえるのか
- 世帯での移住:最大100万円
- 単身での移住:最大60万円
- 18歳未満の子どもの加算:1人あたり最大100万円
- 起業する場合:起業支援金として最大200万円(地域課題の解決に取り組む事業が対象)
子どもが2人いる世帯なら、計算上は100万+100万+100万で最大300万円。決して小さい額ではありません。
誰が対象になるのか(ここが最大の関門)
ここを勘違いしている人が本当に多いのですが、「田舎に引っ越せば誰でももらえる制度」ではありません。基本的には東京一極集中を是正するための制度で、条件はおおむねこうです。
- 移住する直前の10年間のうち、通算5年以上、東京23区内に在住していた、または東京圏(東京・埼玉・千葉・神奈川)に住みながら23区内へ通勤していた
- かつ、直近1年以上はその状態が続いていた
つまり大阪から地方へ、名古屋から地方へ、といった移住は基本的に対象外です。私のように地方から地方へのUターンも同様です。まずここで自分が該当するかを確認してください。
移住先と仕事の条件
移住元だけでなく、移住先と仕事にも条件があります。
- 移住先:東京圏外の道府県、または東京圏内でも条件不利地域とされる市町村。かつ、その自治体がこの事業を実施していること
- 仕事:都道府県が運営するマッチングサイトに掲載された求人に就職する/専門人材として就業する/テレワークで移住前の仕事を続ける/起業する/就農する、などのいずれか
注目してほしいのがテレワーク継続でも対象になり得る点です。今の仕事を辞めずに移住する人にとっては、かなり現実的な選択肢になります(→ 地方移住×リモート・在宅で稼ぐ)。
逆に注意すべきは「自分で見つけた求人は対象外になることがある」こと。せっかく条件を満たしていても、マッチングサイト経由でない求人に就職したせいで対象外、というのは実際に起きるパターンです。仕事を決める前に確認してください。
申請のタイミング
多くの自治体で、転入後3ヶ月以上1年以内に申請する決まりになっています。「落ち着いてから調べよう」と後回しにすると期限を過ぎます。移住を決めた段階で、移住先の役場に一度問い合わせておくのが確実です。
返還が必要になるケース
ここは制度の紹介記事があまり書かない部分ですが、大事なので書いておきます。移住支援金は、条件を満たさなくなると返還を求められます。
- 転入から5年未満で、その地域から転出した場合:原則として全額返還
- 就業を要件として受給したのに、短期間で辞めた場合:返還の対象になることがある
- 虚偽の申請をした場合:当然ながら返還+公表などの措置
つまりこのお金は「5年住み続ける」ことと引き換えの前払いだと考えるべきです。100万円につられて移住を決め、合わずに2年で戻る——となれば返済が待っています。支援金は移住を決める理由にしてはいけない、というのが私の考えです。あくまで、移住すると決めた人が使う制度です。
移住支援金は、年度・自治体によって金額・条件・実施の有無が変わります。予算に上限があり、年度の途中で受付を終了することもあります。ここに書いた内容は全体像をつかむためのもので、必ず内閣官房「いいかも地方暮らし」および移住先自治体の公式サイト・窓口で最新の条件を確認してください。
移住支援金以外の「もらえるお金」
支援金の対象外でも、諦めるのは早いです。自治体ごとに独自の補助を用意していることがあります。
- 家賃補助:月1〜3万円程度を数年間、というパターンが多い
- 引っ越し費用の補助:上限つきで実費を補助
- 住宅取得・リフォーム補助:空き家の改修に手厚い自治体がある
- 子育て支援:出産祝い金、保育料の減免、医療費無料化の年齢拡大など
- 就農・起業支援:研修中の生活費が出る制度も
探し方はシンプルで、「(移住先の市町村名) 移住 補助金」で検索するか、役場の移住担当に直接聞くのが早いです。この手の情報はサイトに載っていないことも多く、窓口で聞いた人だけが知っているというのが田舎ではよくあります。
移住前に、ふるさと納税で「土地を先に知る」
もう一つ、移住前におすすめしたいのがふるさと納税です。気になっている地域に寄付すれば、返礼品でその土地の名産や雰囲気を知ることができます。実質負担2,000円で、その土地を少し体験する感覚です。
ただし使えるのは移住する前の年まで。住んでいる自治体に寄付しても返礼品は受け取れませんし、収入が変わる年は控除の上限も動きます。このあたりは移住とふるさと納税の使いどころにまとめました。移住の年に損をしないために、先に読んでおいてください。
移住候補地を、返礼品で先に「下見」する
楽天ふるさと納税なら地域から返礼品を探せます。気になる移住先の産地を実質2,000円で取り寄せてみると、資料では見えない土地の顔が見えてきます。
ふるさと納税で地域を探してみる →結局、移住のお金でいちばん大事なこと
ここまで費用と制度の話をしてきましたが、身も蓋もない結論を書きます。移住のお金の問題は、移住後の収入が安定していれば、ほぼ解決します。
初期費用が100万円かかっても、支援金が1円ももらえなくても、働き続けられるなら生活は回ります。逆に、支援金100万円を受け取っても、仕事が続かなければ数年で行き詰まり、しかも転出すれば返還です。
だから優先順位は「①仕事の見通し → ②初期費用の見積もり → ③使える制度の確認」の順です。制度から入ると判断を誤ります。仕事の探し方は地方移住の仕事はどう探す?に、地方の求人を扱う転職サービスの選び方は地方転職エージェントの選び方にまとめています。
よくある質問
Q. 地方から地方への移住でも移住支援金はもらえますか?
国の移住支援金は、原則として東京23区在住者・東京圏から23区への通勤者が対象です。地方から地方への移住は基本的に対象外ですが、自治体独自の補助なら使える可能性があります。移住先の役場に確認してください。
Q. 移住支援金に税金はかかりますか?
移住支援金は一時所得として扱われるのが一般的ですが、一時所得には特別控除があるため、他に一時所得がなければ課税されないケースが多いです。ただし個別の事情で変わるので、金額が大きい場合は税務署に確認してください。
Q. 貯金はいくらあれば移住できますか?
初期費用に加えて、収入が安定するまでの生活費を3〜6ヶ月分持っておくと安心です。移住直後は想定外の出費が続くうえ、仕事が決まっていても最初の給料日までは持ち出しになります。
まとめ
- 移住のお金は「出ていく」「変わる」「もらえる」の3つに分けて考える
- 初期費用で大きいのは引っ越し代と車。家族+車購入+遠距離なら100万〜200万円台を想定
- 家賃は下がり、車・暖房費は上がる。手取りの実感は意外と変わらない
- 移住支援金は世帯最大100万円+子ども1人最大100万円。ただし主に東京23区在住・通勤者が対象
- 仕事はマッチングサイト経由が条件になることがある。就職を決める前に確認
- 5年未満で転出すると返還。支援金は移住を決める理由にしてはいけない
- 対象外でも自治体独自の補助がある。役場の窓口で聞くのが早い
- 優先順位は①仕事 → ②初期費用 → ③制度。制度から入ると判断を誤る
お金の全体像がつかめれば、移住の不安はかなり減ります。関連記事:地方移住の仕事はどう探す? / 地方移住と車のリアル / 移住とふるさと納税の使いどころ